資産形成

相続したいらない土地は売却できる?国庫帰属制度の条件とは?

親や祖父母が亡くなった後、「田舎の土地を相続してしまい困っている」という声を時々聞きます。

都会の良い場所にある土地ならすぐ売れるけれど、田舎の土地なのでなかなか買い手がつかないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

維持費もかかるし管理も大変なので、自分が亡くなった後のことを考えると余計に悩みますよね。

そんな中、今年4月に相続土地国庫帰属制度という相続した土地を国に帰属できる制度が創設されました。

田舎の土地の処分に困っている人はこの制度が出来たことで安堵している人もいるかもしれません。

でも、この制度ははたして本当に朗報なのでしょうか?

私たちの「田舎の土地の処分方法」と、新設された「相続土地国庫帰属制度」について、私が知っている範囲でご説明していきます。

相続したいらない田舎の土地は売却できるのか?評価は?

いらない土地は、売却して少しでもお金になるのならそれに越したことはありません。

まずは、売却を目指して動きましょう。

土地の相場は、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を使って調べることができます。

このシステムを使って適正な売り出し価格を決めるようにします。

それから不動産会社に交渉を始めます。

複数の不動産会社に売却を依頼できる媒介契約である「一般媒介契約」を行うことも効果的です。

また、自治体が運営している「空き家バンク」に登録するのも良いでしょう。

空き家バンクは、空き家・空き地を手放したい人と引き取りたい人をWEB上でマッチングさせるシステムです。

しばらく売却のために時間を費やし、もし買い取り手が現れなさそうなら、次の手を考えていきます。

相続したいらない田舎の土地が売れない場合、他の方法は?

不要な土地が売れそうもない場合、他に手放す方法は以下の4点があります。

  1. 国庫帰属制度を利用し国に引き取ってもらう
  2. 他者に譲渡する
  3. 自治体に寄付する
  4. 相続放棄する

1~3は、土地によっては引き取ってもらえないこともありますし、贈与税や負担金などが問題になってきます。

4は、相続放棄する場合、いらない土地だけでなく、預貯金やその他の財産も一緒に放棄することになってしまいます。

いずれの方法も、早い段階から、税理士・会計士・不動産の専門家などに相談しながら決定していかなくてはなりません。

本記事では、1.の「国庫帰属制度」の内容についてスポットを当てていきます。

相続土地国庫帰属制度とは何か。メリットと問題点は?

2023年4月に新設された「相続土地国庫制度」の概要と、その制度のメリット&問題点について解説します。

相続土地国庫帰属制度とは?

昨今、人が住んでいない古い家が増え続けており、「空き家問題」と言われて、テレビのニュースでもたびたび取り上げられていますよね?

土地についても家と同じように、「所有者不明の土地」問題が増えています。

田舎に実家がある人は、祖父母や親からいらない土地を相続されて困っている人が多いのではないでしょうか?

使用していない土地に税金を払ったり維持管理を続けるのも大変ですよね。

だからといって、手放したくても買い手がつかない。

そうこうしているうちに何もできないまま次の相続人へ・・・。

それの繰り返しで放置される土地が増えているのです。

所有者不明の土地をこれ以上増やさないために、先日、相続した土地の所有権を国庫に帰属させる制度がつくられました。

それが、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」なのです。

相続土地国庫帰属制度のメリット

いらない土地を所有し続けることは、固定資産税の支払いや土地の維持管理で、所有者が苦労することになりますよね?

しかし、相続土地国庫帰属制度を利用することで、売れないような土地でも国が引き取ってくれるのがメリットです。

相続した時期に関わらず利用できるので、数十年前に相続した土地でもOK!

また、宅地はもちろん、農地や山林も引き取りの対象になるのも嬉しいポイントです。

相続土地国庫帰属制度の問題点

引き取り手のない土地を抱えて頭を悩ませている人は、相続土地国庫帰属制度の話を聞いて喜ぶ人もいるのかもしれません。

でも、本当にこの制度が土地の処分に困る人全員にとっての朗報なのでしょうか??

制度の内容について見ていきましょう。

まず、法務省の相続土地国庫帰属制度の概要によると、手続きのイメージは以下のようになります。

出典:法務省HP~相続土地国庫帰属制度の概要~

 

このフロー上での制度のデメリットは以下の3点です。

  1. 相続した土地であることが条件(贈与された場合や自らが購入した場合は対象外)
  2. 土地一筆当たり14,000円の審査手数料がかかる
  3. 引き取りが決定した場合「原則20万円」の負担金の支払いの必要がある(土地の状況によって変わる)
お金かかるんかいっ!!

しかし本当に困るのは、以下のように、申請時に却下要件や不承認要件がある点です。

却下要件

1建物の存する土地
2担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
3通路その他の他人による使用が予定される土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる
土地
4土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
5境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

不承認要件

1崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
2土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
3除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
4隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地(隣接所有者等によって通行が現に妨害されて
いる土地、所有権に基づく使用収益が現に妨害されている土地)
5通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
〇土砂崩落、地割れなどに起因する災害による被害の発生防止のため、土地の現状に変更を加える措置を講ずる必要がある土地(軽微なもの
を除く)
〇鳥獣や病害虫などにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある
土地(軽微なものを除く)
〇適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林
〇国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
〇国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

出典:法務省HP~相続土地国庫帰属制度の概要~

特に気になるのが、却下要件の「5境界が明らかでない土地」です。

売ることができなくて国庫に引き取ってもらいたい土地は、境界が明らかでないことも多いのではないでしょうか?

それを考えるとあまり現実的な制度でない感じはしますね。

まとめ

今回の記事では、新設された国庫帰属制度を中心に、相続したいらない土地の処分方法について考えてみました。

国庫帰属制度を利用できる人にとっては、この制度ができたことは朗報かもしれません。

ただ、利用できる人は限られてきますし、簡単には引き取ってもらえない印象ですね・・・。

いらない土地を処分する方法はいくつかありますので、早めに税理士もしくは不動産関係の専門家に相談して、適切な方法を選ばれることをおススメします!

-資産形成