最近、日本銀行の利上げやアメリカの中央銀行であるFRBの利下げが話題になっています。
よく聞くニュースではありますが、金融政策がどのように株価や物価に影響を与えるのか、よくわ からない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回の記事では、金融政策が与える株価や物価の影響についてわかりやすく解説をします。ぜ ひ参考にしてください。
そもそも金融政策とは?何のために行われてるの?
金融政策は中央銀行が経済の安定と成長を実現するために行う重要な政策です。
金融政策の中心的な目的は、物価の安定を保ちながら、持続的な経済発展を支援することにあ ります。
中央銀行にはさまざまな業務がありますが、わかりやすいのがお札を発行してるということです。
物々交換ではなく、お金のやりとりで物を手にできる世の中を作っていくということは経済の発展 には非常に重要です。
なぜなら物々交換ではスムーズに欲しいものが手に入らないからです。
しかし、物価が1年後に10%上昇したり、2年後に2倍になったりすると多くの人は困ってしまいま す。
頑張って貯金しても物価の上昇が急だと、例えば200万円で車を買おうと思って200万円貯めて たのに500万円になってしまうと買えなくなってしまいます。
このように物価が急に上昇すると生活の設計を立てにくくなってしまうのです。
中央銀行は国民が安定した生活を送ったり将来の人生設計を立てやすいようにするために物価 を安定させるという非常に重要なミッションがあります。
物価を安定させるためには金融政策が密接に絡んできます。
景気が良くなるということは企業の売上が上がり、給料が増え、物の値段が上がるということで す。つまり物価を緩やかに上げることによって景気は良くなるのです。
景気を良くするために金融緩和という政策を取ります。
具体的には、金利を低く抑え、お金をたくさん市場に供給します。すると株価が上昇し景気が良く なるのです。
しかし、金融緩和をずっと行うと物価が上昇しすぎたりする副作用もあります。
そのため今度は金融引き締めを行い、景気を落ち着かせて物価を安定させようとするのです。 景気と中央銀行の政策、物価の関係は以下の通りです。
景気の状況 | 中央銀行の政策 金利 | 企業や個人の借入 経済や物価 | ||
景気が悪化 | 金融緩和 | 下がる | 借入やすい | 経済活動は活性化
→物価は上昇 |
景気が過熱 | 金融引き締め | 上がる | 借入しづらい | 経済活動は停滞
→物価は下落 |
このように、金融政策によって、物価や株価は大きく影響をするので、ぜひ覚えておきましょう。
続いて株価に与える影響について説明をします。株式市場の一定のサイクルについて説明しま すので、参考にしてください。
経済サイクル
株式市場には一定のサイクルがあります。このサイクルを読むことによって、株式投資で利益を 出しやすくなるので、しっかり理解していきましょう。株式市場のサイクルは4つに分かれます。
- 金融相場
- 業績相場
- 逆金融相場
- 逆業績相場
基本的にはこの4つの相場が繰り返されます。それぞれの相場と株価の関係は以下の通りで す。
- 金融相場…株価上昇
- 業績相場…株価上昇
- 逆金融相場…株価下落
- 逆業績相場…株価下落
4つのサイクルを図解すると以下のようになります。
青い線が株価です。そして金融相場、業績相場という期間が景気の上昇期間です。
金融引き締めが始まると逆金融相場でまず株価が下がり、そこから実態経済も下降期に入りま す。これが逆業績相場です。
株価は景気に基本的に先んじて動くので下降期の中で株価は底を打ちそしてまた金融が緩和さ れて金融相場に入っていきます。
このように株価は4つのサイクルを繰り返しますので4つのサイクルについてしっかり理解してい きましょう。
金融相場
金融相場は一言でいうと、「不景気のなかの株高」です。企業業績は上がっていないですが、政 府の金融・財政面の景気対策によって期待感の表れで株価が上がってくるというような状況で す。
例えば、世界的にコロナショックが起こって実体経済はダメージが長引いているにもかかわらず 世界的に株高になりました。この2020年からの株高は金融相場に入っていたと考えられます。
金融相場では金融緩和でたくさんのお金を市中に流し、また、公共事業の拡大などで景気を刺 激することによって株価が反騰してくるというような状況です。
金融相場は景気回復を政策金利を下げるなどの金融政策主導で行うのが特徴です。
また、政策金利が下がることにより、銀行の貸出金利も下がります。貸出金利が下がることに よってビジネスを活発化する効果もあります。
銀行は貸出金利を引き下げるために、まずは預金金利を先に下げるのが一般的です。
銀行預金を引き下げると銀行預金では儲からないためお金を株式に回す人が増えます。よって 株価は上昇しやすくなるのです。
しかしこの時点ではまだ企業業績は低迷しています。
「企業業績が上がらないと株価は上がらない」と思っている方もいるかも知れませんが、株価は 人々の期待感を表すものなので業績に先行して動きます。
つまり金融相場は「これから景気は回復するだろう。」といった期待感の相場です。実際に企業業 績が上昇しているというのを確認しているわけではなく、将来の期待感だけで株式は買われると いう状況になります。
金融相場の時に投資をするのにおすすめなのが、公共投資に関連するものです。政府からの働 きかけによって直接的にメリットがある建設や土木、不動産関連などになります。
そして不況に対する抵抗力のある公共サービスを提供している電力や鉄道なども上がりやすい でしょう。また食品も景気に関わらず食べないと生きていけないので株価は下がりにくい傾向に あります。
業績相場
金融相場の次にやってくるのが業績相場です。企業の業績も実体を伴ってきます。
いろいろな経済指標が好転し始め、国全体の数字であるGDPも回復に向かっているのが一般的 です。
いろいろな指標を基に景気の底入れが確認されると金融相場が終わり、業績相場の始まりとい うことになります。
業績相場では金利は緩和されていた状態から少しずつ金利は引き上げられるのが一般的です。 しかし、急激に金利は上がらないですし、これまでの金融緩和などの景気刺激策の効果で業績 は上がり始めます。
業績が伴ってくるとある程度長期で株価が上昇するのが一般的です。
業績相場の特徴としては現実の経済と株価の上昇が一致しているということです。
金融相場は期待感の中で株価は上がっていましたが、業績相場というのは実際の業績の裏付 けがある上で買われます。
そして業績相場は前半と後半では主役が入れ替わるといわれており、前半では素材系や紙パル プ、化学など素材に関わるもの、そして後半では機械、電気、自動車精密機械などが上昇しやす いです。
しかし、株価も上昇し企業の業績も上がりだした頃に金融引き締めの時期がやってきます。 これは過剰なインフレを防ぐためや経済の過熱感を抑えるためです。
業績相場の次にやってくるのが逆金融相場です。
逆金融相場
逆金融相場は金融の引き締めがきっかけになります。
景気が過熱気味で企業の業績は大幅増益予想がされている時などです。
強気相場がフィナーレを迎えて弱気相場に移るストーリーというのは本当に様々複雑な要因が 絡まります。過去の事例を見ると強気から弱気相場になるのはいろいろなパターンがあるので す。
その一方、弱気相場から金融相場になって業績相場になってどんどん株価も上がってて業績も 上がっていくという一連の流れは結構固まったパターンになります。
逆金融相場の初めの方は金利が引き締められますが、景気が過熱しているので業績は良い場 合が一般的です。
しかし株価は実態の景気に先行して動くのでこの逆金融相場になると株価は下落します。 逆金融相場の格言としては「強気相場は幸福感の中で消えていく」というものです。 素材系などは景気敏感株ともいわれ、そういった銘柄がまず全面安になりやすいです。
そして借金の比率の高い電力系なども下がりますこのタイミングでは株式を新規で投資すること は控え、キャッシュのような短期の金融資産に近いものに入れ替えておいたほうがいいでしょう。
そしてそういった金融引き締めの効果もあって実際企業の業績も下がってくるのが逆業績相場に なります。
逆業績相場
逆業績相場は相場の冬の到来というようなイメージです。業績が悪くなれば当然利益なども下 がっていきますので、株価も「それに見合ってないんじゃないか、割高なんじゃないか」というふう に株価の割高感が強まっていきます。
業績相場とは真逆で、業績の低迷といった裏付けがあって売られるので「現実売り」という風にい われるのが一般的です。
企業の業績は最悪で株価も下がっています。ただし景気の過熱感も落ち着き始めているというこ とで金利の引き締め最終段階です。
逆業績相場は悪いことばかりではありません。逆にピンチはチャンスであると考えることもできま す。
財務がしっかりしていて競争力もあって業界トップクラスの優良株は平常時には人気で割高な場 合が多いです。
逆業績相場はこういった優良株を買うチャンスになります。
景気が低迷したら、また景気対策がなされて金融相場に戻ります。
逆業績相場でおすすめなのが景気対策で一番恩恵を受けやすい金融関連の銘柄です。
逆業績相場で金融関連はかなり株価が下がっていると考えられるので安い時に仕込むのであれ ば最大のチャンスということです。
まとめ
今回は、金融政策が与える物価と株価の影響について解説をしました。金融政策についての ニュースはよく聞きますが、具体的にどのような影響を与えるのかについてご理解いただければ 幸いです。